旋法音楽と調性音楽
この二つの関係について考察しました 旋法というのは音階とその力学的作用をまとめたもの、とおもってください 西洋は終始コードのようなものがありますが、日本音楽はその代わりに終始音とでもいうべきものがあります 基本的に五つの音(ただし、上向形下行形によって分かれ6つなこともある)を用いますが、そのうち三つが 終始音(核音、安定)、二つが中間音(不安定)で構成されています 旋法は大きく分けて四つあります Dを中心とすると、(◎…核音、○…中間音、▽下降系中間音△…上行形中間音) □□□□□×#×#××#×#×#× □□□□□CCDDEFFGGAAB ◇都節音階△×◎○×××◎×◎▽× 田舎節音階△×◎×○××◎×◎×▽ ◇◇律音階□×◎×○××◎×◎×○ ◇琉球音階×○◎×××○◎×◎×× それぞれの旋法の特徴を説明しましょう! 【都節音階 通称、陰旋法】…… もっとも登場が新しい旋法です。しかし、江戸期に登場して以来、日本の音楽を席巻しました。 日本を象徴する音階といってよいのではないでしょうか。静と動で言えば静の音階で、みやびな感じがします。 現代人の感覚だと陰気に感じられやすいのですが、当時の人にとっては必ずしもそうではなく、 たとえばたのしいひなまつりなど明るい曲にも使われていることから分かるように、 単純に陰気陽気、メジャーマイナーと分けられるものではないのです 下降的な旋律を持つ傾向にあります 【田舎節音階 通称陽旋法】…… こちらも下降的な旋律を持つ傾向にあります 都節音階とともに、俗楽で用いられる旋法です 都節音階よりは動的ですが、↓に述べる民謡音階よりは静的です 【民謡音階】…… 大事な音階を忘れていました ◇民謡音階○×◎××○×◎×◎×× こちらは上行的な旋律になりやすいです。名前のとおり民謡に使われる音階で、 お祭りなんかの能天気で上へ上へと高まっていく派手な旋律は、大体民謡音階であることが多いです 津軽三味線もたぶん民謡音階でしょう 【律音階】 …… もっとも古くから使われていた旋法で、都節音階、民謡音階はこの音階から生まれました 雅楽や声明など崇高な音楽に用いられます 下降系の旋律の傾向が強いです 【琉球音階】 …… 名前のとおり沖縄の音楽にて使われます 日本の伝統音楽とは断絶が大きいですが、あえて同じ国となった現代に取り込んでみるのも手かもしれません 上行系の旋律です ガムランの音階にも似ています ここで民謡音階以外が視聴できます 音楽の性質のようなものが、旋法によってかなり決まるということが分かるかと思います 西洋音楽(コード主体の音楽)では、マイナーかメジャーかで大きく分かれますが、 日本のような旋法による音楽では、旋法がはらむ力学的関係によって、演奏されるうちに雰囲気が現れるのだと理解してください たとえば中心音と核音の間が狭い都節音階は、おとなしくて内省的な曲に合うでしょう。 民謡音階は二つの中間音が半音三つ分上にあるので、ダイナミックです。 田舎節音階は、一つは半音二つ分上にあるので、やや大人しめ。民謡も田舎節も、移調すれば使用音階が重なるのですが、 何が安定音で何が中間音かによって性格が違うというわけですね なお、これらの旋法以外にも、独自に旋法を作っても良い たとえば都節と律音階を組み合わせて ◎×○××◎×◎○×××(◎) こんな音階を作ったり、こういうことは伝統的にされている(この例は、筝曲の「古今調子」というもの) また、一つの旋法だけだと長い曲では飽きてしまうので、近世邦楽では転調、転テトラコルドが多様される 転調は属調、下属調への転調が多いが、二度や一度の転調もまれにあるらしい テトラコルド理論にそぐわない例外として呂音階、呂陰音階があります 律音階とともに中国から雅楽の音階として伝わりましたが、日本人に合わなかったのかほぼ廃れています しかし面白いので、一応ここにその旋法を書いておきます □呂旋法◎×○×◎××◎×○××(◎) 呂陰旋法◎○××◎××◎○××× 日本の音楽は基本的に旋法の音楽です 西洋音楽は和声進行により音楽が規定されますが、旋法音楽の場合音の力学的関係により、規定されます 旋法音楽の特徴は、演奏の継続によってじわりじわりと空気感が高まっていくところだと思います 和音音楽は演奏と同時に伴奏を一気に鳴らしますから、軽快な進行、自由な展開が可能になったのでしょうが、旋法音楽はそうはいきません 和製音楽が一つの明確な終止形(トニック)があるがゆえに、七音の間を激しく上下する旋律を可能にしたのと対照的に、 旋法音楽は終始音が複数平等に存在し、それ故に大きな動きはなく、BGM的になりがちです 創造性とダイナミックさが大事な現代では、この旋法音楽特有の弱点を克服する必要があると思います 三つの手がかりが考えられます ①義太夫や新内、長唄など展開が激しい劇場音楽に自由な展開を表現するヒントを見出す ②日本音楽唯一の和声とも言える雅楽の笙 ③筝曲によくあるぽろろん、というアンサンブルは一種の和声ではないか 旋法を手がかりに日本独自の和声を考えようとしたり、 また地歌筝曲はすでにトニックの概念を持っているという説を唱える方もいらっしゃったり、 面白い試みは考えられますが、いずれにせよ今の西洋音楽みたいにばんばん伴奏で和声を鳴らすような音楽は避けたいです 一つの解釈を押し付けられているようで、日本語特有の曖昧な深みや、音の間や余韻が殺されてしまうと思います 三味線のサワリの音のような、びぃーんと気持ちよく消えていくあの音を生かせないかと思っています
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2011/07/30 ヘンシウ 仕分け:創作<作曲> 感想:46 ト ラ ッ ク バ ッ ク: ▲ トラックバックユ・ア・レル